昨今、海外の観光客の間でもIzakaya、もしくはJapanese Pubがブームになりつつあります。
居酒屋や大衆酒場が都内にもたくさんありますが、「酒場といえば下町」といわれるくらい、東京の東側にある酒場はマニアの間でも一目置かれています。
東京最東端の街、金町にも酒場マニアたちが羨望するたくさんの下町酒場がありますが、そんな下町酒場を目指して、この日は大学時代の友人たちが横浜からわざわざ金町まで来てくれました。
そうなると案内役は責任重大です。
彼らが納得するお店にご案内しなくてはなりません。
こういう時、私がいの一番に案内するお店が、こちらの「大渕」です。
ここに来れば下町酒場とは何かがわかります。
ちなみに、私が考える下町酒場の条件とは…
- 昭和から変わらない店内
- 家族で営む人情酒場
- 安くておいしい下町価格
- 明朗会計
- ほぼ必ずもつ煮がある
- お店独自の下町ハイボール
- そして品格がある
です!順に見ていきましょう。
まるで映画のセットのような老舗酒場
まずは入口を見て下さい。すでに昭和酒場の雰囲気が漂っています。
この時点でもう友人たちの期待値はマックスです。
中に入ります。
常連さんたちが付かず離れずの距離感でカウンター越しに飲んでいますね。
創業は1969年、今は2代目が暖簾を守っています。
実は私、コロナが明けてから大渕に来るのは初めてでした。
コロナ前に私が来ていた時は、先代は厨房には立たずいつもホールにいました。
先代はただお客さんと喋ってるだけ…?(笑)
でも話術が最高!まさに愛されキャラというほどチャーミングな人がらで、大渕にはなくてはならない存在でした。
その先代も、しばらく来ないうちに完全に引退をされてしまったとのことでした。
2代目にバトンを渡され1年ほどになるようですが、先代が強烈だっただけに、常連さんの中には心配する声もあったようです。
しかしそこは全く問題ありません!25歳の時から大渕の厨房に入ってもうおよそ15年。ベテラン中のベテランです。
後継者不足に悩まれているお店も多いなか、大渕はお父さまから息子さんへ見事に暖簾が受け継がれました。
財布に優しい驚きの下町価格
それではこの日頼んだメニューをご紹介しましょう。
まずはサッポロのラガービール大瓶です。
酒場マニアの間では通称「赤星」と呼ばれています。
私が思う下町酒場の条件その①
サッポロの瓶ビールは黒ラベルではなく赤星がおいてあること。
生モツ三種盛り 450円
タンとシロとガツの3種です。
右上の緑の薬味、なんだかわかりますか?
生にんにくです。
これが絶品なんです。モツの鮮度も抜群!
大渕に来たら必ず頼む一皿です。
もつ煮込み 450円
下町酒場の条件その②
もつ煮がおいしいこと。
7時間も煮込んだ完璧な下町もつ煮です。
先代が元々食肉市場で働いていたので、もつの目利きは間違いありません。
これぞ王道の下町ハイボール
焼酎ハイボール 350円
世間一般ではハイボールというとウイスキー割りですが…
下町酒場の条件③
東京の下町ではハイボールといえば焼酎になります。
焼酎と炭酸と謎の琥珀色のエキス。これが典型的な下町ハイボールです。注文する時は「ボール」と言うのも下町のならわしです。
そしてポイントは、氷無しということです。
下町の猛者達は氷で薄まっていくのを嫌います。
大渕のポールを見て下さい!キンキンに冷えた氷無しのボール、これぞ王道の下町ハイボールです。
さらに値段に注目。なんと一杯350円!これはコロナ前と同価格です。
コロナが収束してから原材料の高騰などでほとんどのお店が値上げしています。
しかし大渕はほとんどそのままで、値上げした品もわずか50円です。かたくなに下町価格を維持し、料理は250円〜550円以内という素晴らしさ!
この安さ、下町酒場の条件④です。
なんと珍しい!ビールの王冠でお会計
下町酒場では昔ながらの方法で、カウンターにチョークで印をして勘定をするお店があります。
ここ大渕はビールの栓を使って計算しています。
令和の時代に王冠で計算しているお店なんて都内でもまず無いんじゃないでしょうか?
ほとんどの料理が250円、350円、450円、550円とわかりやすいのもこの計算方法のためかもしれません。
メニューの紹介を続けます。
辛味ザーサイ
初めて食べる一品でしたが、説明不要のおいしさです。
以前はよくオニオンスライスを頼んでいたのですが、久しぶりに来たらメニューにありませんでした。
若女将に聞いたところ、一瞬考えた後「今、ひまだから作ってもいいですよ」とのこと。
それがこちらです。
シャキシャキのオニオンに鰹節とタレ。中には生卵が隠れています。これを混ぜ合わせると絶品のオニオンスライスに変わります。
ホルモン炒め 350円
2代目が見事な手さばきでちゃっちゃっちゃっと炒めます。これが実においしいんです。
2代目も料理の筋がいいです。お父様のDNAなんですかね?簡単にパパッと作ったものがどれも本当においしいんです。もはや天職です。
のりチーズ
完全に酒飲みのためのメニューです。普通のレストランではなかなか見かけませんね。しかし、のりチーズがあるお店は決まっていいお店なんです。
さっと海苔の味がして、そのあとにチーズの味がふわっと広がります。大葉もいいアクセントになってます。こういうちょっとした一品でも2代目のセンスの良さが出るんです。
そしてもつ焼きです。
大渕はもともともつ焼き専門としてオープンしました。
私が初めて訪れた10年前は、お母様がもつを焼いていましたが、今は若女将が焼き台を担当しています。
下町酒場では、もつ焼きは2本縛りや4本縛りというお店のルールが存在することも。
大渕は3本で2種類、5本で3種類のもつ焼きを選べるシステムです。
一皿3本350円、5本500円。
味付けは、タレ、塩、スタミナから選べます。
アブラ
スタミナのタレとの相性が抜群でした。
カシラ 塩
下町ハイボールと一緒にいただきます。
これに勝るものなし!
下町酒場とは何か?がここにありました
改めて大渕の素晴らしさをおさらいします。
- 昭和44年創業以来変わらないであろうお店の佇まい
- 父から息子へ引き継がれた老舗の暖簾
- 財布に優しい下町価格
- お通し無しの明朗会計
- 昭和レトロな王冠でのお会計
- 氷無しの王道下町ハイボール
この日は3人で飲んで食べて、ボールもおかわりして5400円。1人2000円しませんでした。
お通しも席料も取らない。「本当にこれでやっていけるの?」と思ってしまうほどの安さです。
お客さんが気兼ねなく安心してくつろげる酒場。
本物の昭和の酒場の姿を愚直なまでに守り抜いている、2代目の崇高な心意気にただただ脱帽です。
横浜からはるばるやってきた大学の同級生たちも異口同音に「すばらしい…」とため息…。
私も大渕に案内して本当に良かったです。
金町の酒場といえば大渕で間違いなし!
金町を、いや葛飾を、いや東京の下町を代表する名酒場です。
もつ焼き 大渕
住所:東京都葛飾区金町5-26-4
アクセス:JR常磐線「金町駅」から徒歩約4分
京成金町線「京成金町駅」から徒歩約3分
TEL:03-3600-4363
営業時間:16:30〜23:00
定休日:水曜日